交通事故情報通

交通事故損害賠償のページ

: 



交通事故情報通トップページ

「過失割合」の問題が浮上してくる「死亡事故」。「過失割合」とどう戦えばよいのか?

 
自分のケガは一体何級の後遺症にあたるのか?等級に異議がある場合はどうすればよいのか?
 
感情的になっても始まらない。損害額の概算を把握することからすべては始まる!
 
修理可能か不可能かをまずは見極める!損害項目を洗い出せ!
 
事故別の基本過失割合を知る!
 
事故別のよくある質問とその答え

 

 

 

 
 
 

 

 

当サイトに関するお問い合わせ先
あおば行政法務事務所
プライバシーポリシー
〒 225-0024
横浜市青葉区市ヶ尾町1153-3
第2カブラギビル606
電話 045-979-0120
FAX 045-979-0121
info@jiko2.com

 

交通事故の慰謝料に相場はあるのか?
「慰謝料の相場が知りたい」「妥当な請求額がわからない」「現在の提示額が妥当かどうか知りたい」という方は、オンラインによる「損害概算算定サービス」(9,800円)をご利用ください。

死亡事故のご遺族後遺症等級の認定されている方後遺障害等級の認定されていない方、の全てのケースに対応しています。


後遺症の認定にあたって

 事故に遭い、入通院をしたけれどもケガが完治せず、後遺症が残ってしまった場合には、被害者は自賠責に対して後遺症の認定手続きを行っていくことになります。一言に後遺症といっても、植物状態になってしまった、全身が麻痺してしまった、意識障害が残ってしまったといった重度のものから、両手がしびれる、局部の痛みがとれないといった比較的軽度のものまであるのですが、これらは後遺症の等級として1級から14級までの間で認定がなされることになります。
後遺障害別等級表

 損害賠償という観点からは、この後遺症の認定が下りるかどうか、また何等級での認定がなされるかで、その損害賠償額が大きく異なってきます。
 後遺症の認定手続きが可能になるのは、事故後6か月経過した時点からであり、この点、被害者に重度の後遺症が残ってしまった場合には、被害者が特段自発的に何かしなくても、6か月経過した辺りから、保険会社が後遺症の認定に向け動き始めます。

 ただし、ここで注意してほしいのは、後遺症の認定に向けて動く時期というのは、あくまで医師との話し合いをもとに被害者が決定すべきものであるということです。
 
 よく問題になるのが、医師がまだ治療の必要があると感じていて、症状は固定していないとの判断をしているのに、保険会社が後遺症の認定を急かせる動きを医師及び被害者に対してすることがあるということです。
 確かに、なるべく早い段階での後遺症認定は、症状が安定していない段階で後遺症診断書が作成されるため、ケガの内容によっては、そのことが後遺症の認定に有利に働くということもなきにしもあらずです。
 しかし、逆にこの早い段階での後遺症認定に向けての動きが、被害者にとって、不利に働くこともあるということも認識しておく必要があるでしょう。

 どういうことかというと、損害賠償という観点からは、症状が固定したという判断のもと医師に後遺症診断書を作成してもらった時点から、それまで補償されていた治療費等は後遺症としての補償に切り替わってしまうために、被害者はこれらを自分で負担しなければならなくなるということです。(厳密に言うと、後遺症の認定が実際に下りた場合には、この点も含め、後遺症に対する補償として賠償がなされることになります)
 特に比較的軽微な後遺症(特に鞭打ちなど)の場合の被害者は、後遺症の認定にあたって、画像上の所見がないために、後遺症の認定がなされないということがしばしばありますが、このようなことになったときに、被害者としては、症状が残っているので通院はしたいが、治療費等の補償はないために、通院もままならないということが起こりえます。

  これらのことが被害者にとって有利に働くかどうかは、あくまで結果論ですので、被害者としては、治療の方針および後遺症の認定に際しては、医師との十分な話し合いの上で慎重に決定すべきです。
  少なくとも、医師から「まだ、経過を見る必要がある」と言われているにもかかわらず、保険会社から「そろそろ後遺症の認定ということで動きましょう」と急かされて、後遺症診断書の作成を医師に依頼するということは避けたほうがよいでしょう。

 時期の問題はさておき、後遺症の等級についてですが、後遺症の等級認定は、自賠責保険の「損害保険料率算出機構」というところが行っています。
  この等級認定手続きに関しては通常保険会社が代行して手続きをすることになりますが、この 「損害保険料率算出機構」での後遺症の認定は、基本的に書面による審査で行われるために、時として被害者実情を反映していない認定が下されることがあります。
  その場合には、「損害保険料率算出機構」に対し、適切な等級が認定が下されるように異議の申し立てを行わなければなりませんが、この異議申立て手続きについてまでも保険会社が代行して行ってくれるとは限りません。
 被害者としては、自分の後遺症が一体何等級に該当するのかということをあらかじめ踏まえた上で保険会社の動きをチェックし、場合によっては、自ら異議申立てに向けて動いていかなければなりません。
後遺障害別等級表
 

被害者は加害者に対していくら請求できるのか?

 無事に等級の認定が終わったら、次に被害者が考えていかなければならないのが、「一体いくら請求できるのか」という損害賠償の問題です。
 後遺症が残る事故の場合に被害者が請求できる損害項目は、以下の9つです。

1.治療費・入院費
2.通院交通費
3.入院雑費
4.付添看護費用
5.休業損害
6.入通院慰謝料

7.後遺症逸失利益
8.後遺症慰謝料
9.その他の費用


 上記の損害項目の中で、1.〜6.までは、「後遺症が残らない事故」の場合の損害項目と同じですので、「後遺症が残る事故」における特有の損害項目は、「7.後遺症逸失利益」「8.後遺症慰謝料」ならびに「9.その他の費用」ということになります。
 中でも「7.後遺症による逸失利益と」「8.後遺症慰謝料」に関しては、共にその損害賠償額は後遺症の等級に従って計算されますので、その意味でも、被害者にとって自分の後遺症がどの等級で認定されるのかということは非常に重要なことといえます。
 
 さて、ここで「8.後遺症慰謝料」に関して、ひとつ注意事項があります。
 この「8.後遺症慰謝料」というのは、被害者がケガをして通院したり入院したりしたときに請求できる「入通院慰謝料」とは別に請求できるものであるということをぜひ頭に入れておいてください。
 この点、保険会社の中には、被害者の無知につけこんで、「入通院慰謝料」だけを提示して被害者を納得させようとする者がいますので注意が必要です。
 保険会社サイドから、「慰謝料はこの金額です」と言われても、示談書にサインしてしまう前に、その慰謝料の中にきちんと後遺症慰謝料が含まれているのかどうかということをまずは確認するようにしましょう。

 以下、順にそれぞれの損害賠償項目についての説明をしますが、以下記述している損害計算の根拠は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」、すなわち一番高額な基準である裁判基準をもとにしたものとなっています。
  この裁判基準での計算をすることによって、「被害者として一体いくら請求できるのか」というその上限額を知ると同時に、示談において相手に「何もしらない被害者」というレッテルを貼られないことが非常に重要になります。

慰謝料を含め、ご自身のケースにおける具体的な損害賠償額を知りたいという方は、当事務所で概算を算出させていただきますので、こちらからお申し込みください。

1.治療費・入院費
 治療費・入院費については必要かつ相当な実費全額が認められます。
 ただし、以下のものについては注意が必要です。

@特別室使用料
原則として認められないが、医師が療養上必要と認めた場合などで、治療上有効かつ必要がある場合に限り認められる。
A鍼灸・マッサージ費用
医師の指示があり、治療に有効なものが必要かつ妥当な範囲が認められる。
B温泉療養費
医師の認定と指導の下によるもののみ、必要かつ妥当な範囲が認められる。

* 当然のことですが「過剰診療」や必要以上の「濃厚診療」については事故との因果関係なしと判断されます。


2.通院交通費
  被害者が通院に要する交通費は、バス、電車などの交通機関による料金の限度で請求できます。ただし、傷害の部位からみてバス、電車などによる通院が難しいと思われるときや、適当な公共の交通機関がない場合にはタクシー料金も請求できます。
  支出したものについては領収書等はすべてとっておき、領収書がとれないもの(たとえばバス、電車の運賃など)についてはメモを残しておくようにしてください。
  その他判例により認められたものとしては以下のものがあります。

看護のための近親者の交通費
自家用車のガソリン代、高速道路料金、駐車料金
遠隔地の場合の宿泊費(滞在が必要で相当である場合)、賃借した家賃及び共益費など
見舞いのための交通費


3.入院雑費

  被害者が入院した場合は、入院中に通常必要となる日用雑貨品(寝具、衣類、洗面具、ちり紙などの購入費)や栄養補給費(牛乳、バターなどの購入費)・通信費(電話、郵便代など)・文化費(新聞雑誌代、ラジオ・テレビ賃借料など)をまとめて、1日につき 1,500円程度を雑費として請求することができます。
 この分の請求にかかる領収書は不要ですが、定額を超える場合でも社会通念上、必要かつ妥当な範囲であれば認められるので、明細が分かる形で領収書は保管しておくことが必要です。

(1)日用品雑貨費(寝具、衣類、洗面具、ちり紙などの購入費)
(2)栄養補給費(牛乳、バターなどの購入費)
(3)通信費(電話、郵便代など)
(4)文化費(新聞雑誌代、ラジオ・テレビ賃借料など)


4.付添看護費用

  医師の指示、受傷の部位、程度、被害者の年齢などからみて、付添が必要であれば、被害者は付添看護費用について請求できます。いくら請求できるかについては、通院か入院か、また職業付添人か近親者が付添ったのかによって違ってきます。

(1)通院の場合
 職業付添人の場合・・・・・・・・・全額請求が可能
 幼児、老人、身体障害者などに近親者が付添った場合・・・ 1日につき3000円〜4000円(2)入院の場合
  職業付添人の場合・・・・・・・・・全額請求が可能
  近親者が付添った場合・・・・・・1日につき5500円〜7000円


5.休業損害

  交通事故で、被害者がケガをして通院・入院した期間中に仕事を休み、収入が減った場合に、この減収分を請求することができます。この休業損害は、あくまでも実際の減収分に対する補償であるため、無職であった場合などは 実際に収入は減少していないため請求することができません。ただし、専業主婦や就職活動中の失業者などの場合には、直接的な収入の減少はないのですが、損害は生じているので請求することが可能です。

@会社員の休業損害計算式
 休業損害の計算式は、
 「(1日あたりの平均収入額×休業日数)−(一部支給額)」です。
 1日あたりの平均収入額は、事故前3か月間の支給額÷90日で算出します。支給額には、基本給与のほか残業代などの諸手当も含まれます(社会保険料や所得税控除前の額)。
 次に、この額に休業日数(欠勤日数)をかけます。休業日数(欠勤日数)には、被害者が有給休暇を使って仕事を休んだ日にちも入れます。
 通常はこれで算出された額が休業損害となるのですが、もし事故が出勤途中に起きたなどで、あなたが労災から給料の何割かを支給されていたりしたときには、その分は引かなければならず、この一部支給額を引いた残りが休業損害となるわけです。

例 サラリーマンAさん  
月収36万円(社会保険料や所得税控除前の額)
欠勤日数は15日(そのうち3日間は有給休暇を使用)
労災からの支給はなし
@1日あたりの平均収入額108万円÷90日=12000円
A休業損害額12000円×15日=18万円
なお、会社員は、会社の発行する「休業損害証明書」「源泉徴収票」などによって収入額、休業日数を証明することになります。

A自営業者の休業損害計算式
 休業損害の計算式は、
 「(1日あたりの平均収入額×休業日数)−(一部収入額)」です。
 1日あたりの平均収入額は、事故前年の収入額(所得税申告所得額)÷365で算出します。所得については「確定申告書」や「所得証明書」をもとに計算することになります。
 この額に休業日数をかけた金額が休業損害の額となります。
 なお、事業主の休業によって、事業自体も休まざるを得なくなってしまった場合には、店舗・事務所の家賃や、従業員の給料、保険料などの固定費も請求できる場合があります。

B主婦の休業損害計算式
 主婦の場合の休業損害の計算式は、
 「賃金センサスの女子平均賃金×休業日数」で計算します。
 家事の対価は算定が困難なため賃金センサスという、労働省が出している女子の全年齢の平均賃金を基準にすることになっています。
 賃金センサスによれば、女子の全年齢の平均賃金は、352万2400円となっていますので、これを365日で割ると、1日あたりの平均賃金は9650円となります。
 これに入院や通院のために家事を休んでいた期間をかければ、主婦の休業損害が算出できます。(ただし、怪我の内容によっては全額が認められず、主婦としての労働能力を喪失したとされる範囲での認定となる場合があります。)
  仕事を持つ主婦の場合は、この主婦の休業損害と実収入のいずれか高い方を請求しましょう。
 なお、家事を家政婦などに頼まなければいけなかった場合には、休業損害にかえて家政婦に支払った金額を請求できます。


6.入通院慰謝料

  慰謝料の額というのはある程度定額化されており、その基準は大きく分けて3種類あります。
 金額が低いものから順に「自賠責基準」「任意保険基準」「日弁連基準(裁判基準)」があります。目安を言えば、自賠責基準を1とすると任意保険基準1.5倍、裁判基準が2倍といったところで、どの基準で慰謝料を算定するかによってかなりの差が出てきます。(「日弁連基準」の慰謝料額については、こちらを参照してください。)
 保険会社は、「慰謝料はこの額が相場です。」などと言って、一番低い基準である自賠責基準を基礎に多少増減を加えた額を提示してくるのが一般的です。
 しかし、自賠責基準というのは、あくまでも国による最低補償ですから、被害者はこれで納得してはいけません。
 「実際にどのあたりで示談がなされるか」ということについてですが、当事務所での解決例を参考にみますと、被害者が示談の範疇での解決をのぞむ場合には、「任意保険基準」と「日弁連基準(裁判基準)」の中間の金額で示談するケースがほとんどです。

(損害の計算方法がよくわからない場合には→「損害概算サービス」をご利用ください。)



7.後遺障害による逸失利益
  被害者のケガが治療の甲斐なく、もうこれ以上は治療を継続してもよくならないという状態のことを「症状固定」といい、この状態に入ると被害者は加害者に対して後遺症による逸失利益(事故がなければ本来は得られたであろう被害者の収入)が請求できるようになります。但し、その前提として、後遺障害等級に該当する程度の後遺症である必要がありますので、被害者は、「症状固定」の段階で後遺障害等級の認定手続を受けることになります。

逸失利益の計算式は、
@年収×A労働能力喪失率×B係数です。

@ まず年収額を確定してください。
収入を証明できる人の場合には、後遺障害確定後または事故前1年間の収入(所得税控除前のもの)となり、収入を証明できない人(幼児や18歳未満の学生や主婦、求職者など)の場合には賃金センサスの男女別全年齢平均賃金に基づいた額で計算します。賃金センサスについては、こちらを参照してください。
A 次に後遺症が何等級にあたるのかと、それに対応した労働能力喪失率を調べます。後遺障害別等級表はこちらを参照してください。
B 最後に係数を調べます。係数はこちらを参照してください。

例1 サラリーマンAさん  35歳・会社員・月収35万円・ボーナス年間100万円
    今回の事故によって、右目を失明した

@年収 35万円×12ヶ月+ボーナス100万円=520万円
A後遺障害 8級・労働能力喪失率45%
B係数  15.803
後遺症逸失利益 5,200,000円×0.45×15.803=36,979,020円

例2 主婦Bさん 25歳・主婦
  今回の事故によって、下半身付随になった

@ 賃金センサスにより、年収 3,522,400円
A 後遺障害 1級・労働能力喪失率100%
B 係数 17.423
後遺症逸失利益 3,522,400円×1.00×17.423=61,370,775円

 基本的には、逸失利益の計算は以上の計算式で求められるのですが、むちうち症などの後遺症では、逸失利益が2年程度しか認められないことがあります。
 後遺症事案の場合には、等級の認定や損害額の確定など専門的な知識が不可欠ですので、解決にあたっては、必ず専門家の手を借りるようにしてください。

ご自身のケースにおける損害賠償額の概算を知りたいという方は、当事務所で概算を算出させていただきますので、こちらからお申し込みください。


8.後遺障害に対する慰謝料
 さて、傷害分の慰謝料である「入通院慰謝料」とは別に、被害者が後遺症を負ってしまった場合には、「後遺症の慰謝料」が別途請求できるということについては、前述しました。入通院慰謝料については、入通院の日数、期間から計算をしますが、後遺症慰謝料については、後遺障害の等級によってある程度定額化がされています。
 入通院慰謝料と同様、後遺症慰謝料にも3つの基準があり、被害者が裁判を望まず、示談で解決する場合には、「任意保険基準」と「日弁連基準(裁判基準)」の間の金額でまとまっているのが一般的です。
 ここでは裁判基準を載せておきますので、参考にしてください。

等級
金額
1 2600〜3000万円
2 2200〜2600万円
3 1800〜2200万円
4 1500〜1800万円
5 1300〜1500万円
6 1100〜1300万円
7 900〜1100万円
8 750〜870万円
9 750〜870万円
10 480〜570万円
11 360〜430万円
12 250〜300万円
13 160〜190万円
14 90〜120万円


9.その他の費用
 
後遺症が残ってしまった場合には、その後遺症によって将来かかるであろう出費についても、請求することが可能です。
 たとえば、被害者に高度の後遺障害が残った場合、自宅での生活が不自由にならないよう風呂やトイレ、車などを改造したりしなければなりません。また、メガネ、補聴器など何年かしたら買い替えなければいけないものについてはその買い替え費用についても、現時点で請求することができます。
 現時点でといったのは、本来なら将来買い替えるものについてはその時点で請求すべきものですが、それは大変なので、現時点で買い替えを想定して請求していくことができるということです。ただし、こういった本来なら将来に請求すべきものを現時点で請求するといった類のものについては、中間利息(法定利率5%)を控除しなくてはなりません。

器具などの購入費 車椅子、補聴器、義足、入れ歯、メガネ、盲導犬など
家屋・自動車などの改造費 車椅子での生活が可能なように家の段差をなくす・家庭用エレベーターをつけるなど

* 将来の治療費・手術費・付添い看護料などについては、生存に必要不可欠なものでないと原則は請求できませんが、これらも後遺症の部位・性質・程度から場合によっては請求できます。

なるべく早い段階で証拠収集を!

 被害者が事故後に救急車で搬送された場合や、事故後、しばらく意識もなかったというような場合などに、加害者側と被害者側の間での事故発生状況についての意見が食い違ってくるということがあります。

 死亡事故の場合に、被害者に一方的に過失が押し付けられ、損害賠償額が大きく減らされてしまったり、被害者に全面的な過失があるとされ一銭も賠償がなされないという「死人に口なし」の扱いがなされてしまうということがよく問題になりますが、この問題は、死亡事故に限られたものではありません。
  後遺症事案でも、特に、被害者が事故後に救急車で搬送された場合や、事故後しばらく意識もなかったというような場合、被害者に重度の後遺症が残り被害者が証言できない場合などにもこれと同様のことが起こりえます。

 加害者というのは、意識、無意識は別にして、往々にして自分に有利な証言をする傾向があります。もしこのような問題に陥ったときに、被害者側が相手の言い分に対抗できる手段というは、自分の主張を裏付けてくれる証拠しかありませんので、被害者または被害者の家族は、このことを念頭において、なるべく早い段階で独自に証拠収集をしておくことが必要となります。

 この点、警察が作成する実況見分調書は、あくまで加害者の刑事処分のためのものであり、時に、この調書は加害者の供述によって歪められてしまうことがあるので注意が必要です。

証拠は具体的に何をどうやって集めればよい?

 可能であれば警察の実況見分に立ち会い、目撃者がいれば、目撃者から事故の状況についての情報を得るようにしてください。この警察が作成する実況見分調書はあくまで加害者の刑事処分のために作成されるものですが、この調書の記載事項が、後に被害者から加害者に対してなされる民事上の損害賠償請求においても、重要な書類になることは言うまでもありません。
  ですからきちんとした調書が作成されるよう見守る必要があります。また警察の調書とは別に、被害者側でも独自に事故の発生状況について証拠となりうるものについて写真を撮ったり、図面を作成するなりして記録を残すようにしてください。

 事故直後には、その事故がどのようにして起こったのかについての証拠が沢山残っています。ここでは、警察が通常、実況見分調書に記載する証拠類について、事故の発生状況を推察するうえではどの証拠がどのように役立つのかについて説明します。現段階で被害者として独自に収集できるものは限られているかもしれませんが、できる限りの証拠を収集するようにしてください。

 証拠とは、目撃者、血痕、ガラスなどの破片、事故車両、道路上に残ったタイヤの痕跡などのことです。

目撃者・・・現場にいたら、名前と連絡先を必ず聞きます。目撃者は後から探し出すのは非常に困難です。また、目撃者の証言は、利害関係のない第三者のものですから、証拠能力の点で非常に重要です。

血痕・・・血痕の位置によって、被害者(加害者)が事故によってどちらの方向に飛ばされ、事故後搬送されるまでどの場所にいたのかの手がかりになることがあります。写真に収めるとともに、位置を図面に記入します。

ガラス・・・事故によって車のガラスなどが割れた場合には、そのガラスが事故後どの位置に飛んでいたのかによって衝突位置がどこであったのかの手がかりになることがあります。写真に収めるとともに、位置を図面に記入します。

事故車両・・・事故車両の破損部位と程度、事故後の事故車両の停止位置により、どのような状況で起こった事故なのかを把握する大きな手がかりとなります。写真に収めるとともに、停止位置を図面に記入します。事故車両の写真を撮る場合には、衝突箇所を正面から撮るだけではなく、横から見てどの程度の凹み具合なのか(できればメジャー等で凹みを計測しながら撮影する)がわかるように撮影するようにしてください。大きな凹みだけでなく、小さな傷があるときはそれらもすべてメジャーで計測しながら撮影してください。(できれば接写してください)

路上の痕跡
・・・スリップ痕、横滑り痕などタイヤの痕跡、金属痕(衝突により車体の金属部分によって路面につけられた傷のこと)、オイル痕など路面上に残っている証拠により、事故の発生状況、スピード等を知る手がかりになります。これらは写真に収めるとともにタイヤの痕跡については、何メートルあるのか計測し、図面に記入します。

道路・・・相手の進行方向、被害者の進行方向それぞれの道路に立ち、事故現場方向に向かって撮影します。事故当事者の事故前の視線から事故現場がどのように映ったのかがわかるように撮影します。

その他・・・天候(道路の湿潤、凍結、積雪)や道路状況の記録(大きな事故が発生するとその道路には速度規制がなされたり、街灯が設置されたり、改修がなされたりして道路状況が変わってしまうこともあります)、道路標識(最高速度、駐停車禁止、一旦停止、追越禁止、横断歩道、センターライン、信号機、ガードレール、歩道橋など)があれば写真に収め位置を記録し、駐車車両があればナンバー等も記録するようにします。

加害者にはどのような制裁が加わるのか?

交通事故で人にケガを負わせてしまった加害者は、大きく分けて3つ制裁を受けます。

刑事責任・・・事故で他人を死傷させた場合には、刑法に定められた懲役刑・禁固刑・罰金刑に処せられる。また、無免許運転や酒気帯び運転、30キロ(高速道路は40キロ)を超えるスピード違反など道路交通法に違反した場合には、懲役刑・禁固刑・罰金刑・科料に処せられる。

行政責任・・・道路交通法に違反している場合には、運転者に違反点数が課せられて、点数が一定以上になると、免許の停止や取り消しなどの処分を受ける。

民事責任・・・事故で他人を死傷させた場合には、自動車損害賠償保障法(自賠法)および、民法709条の不法行為責任に基づいて損害賠償責任を負う。

 刑事責任についてですが、加害者は業務上過失致死傷で検挙されても、そのほとんどが書類送検というかたちであり、逮捕・勾留されることはまずありません。加害者が書類送検されると、今度は検察官が加害者を刑事事件として起訴するかどうかを決定しますが、交通事故で起訴されるのは年間10%ほどで、多くの加害者は起訴猶予処分として不起訴に終わっています。また、仮に起訴されても略式命令(公判を開かずに書面の審理のみで50万円以下の罰金が言い渡される)で終わることがほとんどで、正式な公判によって懲役刑や禁固刑を言い渡され、執行猶予もつかずに実際に刑務所に入る加害者は本当に少ないということになります。

  加害者の刑事処分は、被害者の予想に反し、相当軽いもので終わることがほとんどですが、加害者の刑事上の責任と民事上の責任とは、密接に関連していますので、被害者は、加害者の刑事処分をはじめ、行政処分についても関心を持っておく必要があります。

加害者の処分などについては、どうやって知ることができる?

被害者通知制度・・・被害者通知制度とは、被害者が検察庁に対し、加害者の刑事処分がどのようになっているのかを問い合わせることができる制度です。問い合わせることによって、加害者が今回の事故の刑事責任について起訴されたのか、また起訴された場合、公判はいつなのか、どのように処分されたのかなどについて聞くことができます。

具体的には、
1.事件の処理結果(公判請求・略式請求・不起訴)
2.裁判を行う裁判所及び裁判が行われる日
3.裁判結果
4.被疑者・被告人の身柄の状況、起訴事実、不起訴の理由の概要など
5.受刑者の計の執行予定終了予定時期、仮出獄又は自由刑の執行終了による釈放及び釈放年月日といったことについてです。

 ただ、事件の性質などから通知が受けられない場合もありますので、まずは検察庁に問い合わせをしてみてください。もしも加害者が不起訴になっていて、被害者がその処分に納得ができないということであれば、検察審査会というところに加害者の起訴を再度検討するよう申立をすることができます。

 また加害者の行政処分についても警察に問い合わせれば被害者は知ることができます。具体的には、免許の取り消しや免許停止、点数評価、これらの処分が行われなかった場合にはその旨、過去に加害者が免許の取り消しや免許停止などの処分を何回受けて、累積点数が何点であったのかについてです。(ただし加害者が過去に課せられた行政処分については、その事故内容などは公開しないことになっています。)

過失相殺って?

 過失相殺とは平たく言うと、民事上の相手方への損害賠償において、自分に発生した損害額のうち、自分の過失分に相当する金額については、相手に支払いを請求することができず、また逆に、相手に発生した損害額のうち、自分の過失分に相当する金額については相手に支払いをしなければならないという関係のことをいいます。

 例えば、加害者Aの損害額100万円(自動車運転、ケガはなし)と被害者Bの損害額5000万円(歩行者、事故によって後遺障害を負った)という事故で、Aの過失割合が80%、Bの過失割合が20%であったとします。

 この場合Aは、Aの損害額のうち80%(80万円)はAの過失によって発生した金額であるためBに請求することができず、20%(20万円)のみ請求できるということになります。

 一方被害者であるBも、Bの損害額のうち20%(1000万円)はBの過失によって発生した金額であるためAに請求することができず、80%(4000万円)のみ請求できるということになります。

 以上から、AはBに対し20万円を請求し、BはAに4000万円を請求することになり、結局加害者Aが被害者であるBに対して3980万円を支払うことになります。

 さて、もしこのケースで、過失割合に関して事実とは違った認定がなされ、過失割合がA20%、B80%とされてしまった場合にはどうなるのか・・・ということですが、同じ方法で計算してみると、AがBに対して請求できる金額は、80万円、BがAに請求できる金額が1000万円となり、結局被害者であるBがAに請求できるのは920万円となるわけです。

 さらに、Bの過失が100%であるとされた場合には・・・被害者BはAに対し1銭も請求することができず、逆にAに発生した損害の100%(100万円)を支払わなければならないということになります。
 以上のように、過失割合の問題は、損害賠償という側面においても大きな意味を持ちます。

過失割合はどのようにして決まる?

 過失割合は、事故後の状況、事故当事者の言い分、目撃者の証言などを参考に、どちらにどのぐらい事故発生に対しての過失があったのかという判断をするわけですが、たとえば、車同士の事故の場合、100:0の過失割合になるのは、一方のセンターラインオーバーによる正面衝突や追突事故の場合などに限られ、これ以外の事故では、客観的にみて避けられないような事故であっても、過失割合は100:0にはならず、10%程度は過失が割り当てられるというのが一般的です。

 この過失割合、事故の当事者が事故の発生状況について事故現場で証言できる場合には、お互いに言い分を主張できるわけですから、もし、相手が事故発生状況について根本的な嘘を言ったとしたら、被害者はそれに対し反論していくことが可能です。ですから、どちらかが極端に大きな嘘をつくということはあまりありません。問題なのは事故後被害者が救急車で病院に搬送されてしまい、反論できない場合です。こういうときに起こりがちなのが、事故後の加害者の一方的な言い分のみが一人歩きしてしまい、加害者に有利な方向へ事実がねじ曲げられてしまうということです。

 このようなことにならないためには、被害者または被害者の家族は、事故がどのように起こったのかについて、独自にできるかぎり調べ、事実に反することが証言されたら、それに対して反論できる準備を整えておくと共に、事故の一般的な過失割合についても把握しておく必要があります。

 また、保険会社によっては事故状況の調査もろくにしないで「この事故の場合の過失割合は○対○と決まっています。」「どんな事故であってもハンドルを握っている限り、被害者にも過失がある・・・。」というようなことを言ってるくことがあります。
 過失割合の問題は、最終的に被害者が受け取る損害賠償額を大きく左右するために、保険会社からすれば、被害者にいくら大きな損害が生じていても、過失さえ被害者に押し付けることができれば、会社が支払う金額がぐっと減るので、懸命になってくるともいえるでしょう。
  その意味でも被害者は、過失割合について事前にある程度の判断材料を持っておく必要があります。
 
  以下は判例をベースにした事故形態別の基本的な過失割合を掲載してあります。過失割合について、おおよその目安を知る上での参考にしてください。

 ここでは、事故形態別の基本的な過失割合を掲載しておきますので、事故形態別の過失割合について、おおよその目安を知っておいてください。

専門家を立てるときの注意点は?

 後遺症が残る事故の場合は、等級認定の是非についての検討からスタートとなります。等級で非該当とされている場合も、現時点での等級に異議を申し立てる場合も、書面審査という自賠責の特色を踏まえた上で、どのような書類を提出すべきかを慎重に検討していかなければなりません。

 損害賠償という点では、当然のことながら、この等級が何級で認定されるかどうかで、金額は大きく異なってきます。
 後遺症が残る場合には、被害者は現実問題として、今後の収入に影響が出てくることほとんどであり、特にその部分は、逸失利益・後遺症分の慰謝料等できちんと賠償してもらわなければなりません。
 しかし、 この点に関しては、金額が大きいだけに、相手もあらゆる手立てを使って、金額を下げようとしてきます。それに対して、被害者側も相手の主張を吟味した上で、根拠のある反論をしていかなければなりません。

 後遺症が残る事故の場合には、等級の認定に関すること、また、その損害額の算定に関することなど、あらゆる面で専門的な知識が必要であり、また、専門家費用(行政書士報酬・弁護士報酬)を支払っても、専門家を立てることによって金額が大幅に増額するケースがほとんどですので、専門家によるサポートは必須であると考えます。
 
 しかしながら、 通常、後遺症が残る事故の被害者は、長期に渡り入通院を余儀なくされているため、生活が厳しくなっているケースが多く、また、治療費等で自賠責の限度額は使い果たしているため、自賠責に対する傷害分の請求を先行して、これを専門家への着手金にあてることもできないというケースがほとんどです。
 こういったことから、中には、専門家に対する着手金が支払えないために、仕方なくあきらめてしまったという被害者もいるようですが、専門家によっては、この点を考慮して受任してくれる場合もありますので、まずは現状を説明した上で、相談してみることをお勧めします。その際には、受任の可否と共に、解決までの流れはどうなっているのかということをきちんと確認し、その間にかかる費用をはっきり示してもらうようにしてください。

「当事務所で受任した場合のおおまかな流れ」と「参考事例」は→こちら

(c) 2004 all right reserved Mitsuhiro Saito and AOBA Solicitors Office


交通事故 損害概算サービスへのリンク